(1日目から続く)
夜明けとともにテントを畳み、とりあえず坪入山へ向かって歩き出した。(2018年4月29日)
いきなり下りだ。
???
坪入山へ向かう稜線ではなく、北西方向の尾根を下っていることに程なく気づく。
いかんいかん。登山道を歩くのと違い、雪の上を歩いているとこのようなことが起こりやすい。
冬季の大戸沢岳や下郷の観音山の山頂から下る際も誤った尾根を下りかけてしまったことがある。幸い、すぐにおかしいと気づいて大事には至らなかったが。
気を取り直して坪入山へ歩き始める。坪入山に近づくにつれてどんどん登りがキツくなってくる。。
昨日の疲労もあり、朝から両足釣りだ。どんどん引き離されるが、必死にkmさんについていく。
手を付きながら最後の急斜面を登りきり、遂に坪入山初登頂だ。坪入山も会津百名山である。ここまでですらかなり手こずったが、初登頂で素直に嬉しい。
しかしここからが本当の地獄であった。
この年は雪の付きが悪く、坪入山から西の1,754mのピークに行くのも一苦労した。他の方のブログを見ていたら、我々の2~3日後にここでプチ滑落している方もいたようだ。
高幽山へは距離もある上に一旦鞍部へ下って登り返さなくてはならない。越後駒ヶ岳方面の素晴らしい山並みが見えて感動する反面、高幽山への道のりを見て絶望を禁じ得なかった。
雪の付きも悪く、一部雪のないところを歩いたり、割れた雪の上を歩いたりも強いられた。
高幽山への登り返しはこの世の地獄であった。晴れて暑かったこともあり、思い出したくもないくらいの悪夢のような苦行となった。
高幽山の山頂に着いた時には疲労と暑さでノビてしまった。。先を急ぎたそうなkmさんには申し訳なかったが三十分ほど昼寝をさせてもらった。
個人的にはもう高幽山でテン泊して帰りたいくらいの疲労であったが、kmさんはそんなつもりは毛頭ないようだ。。
吐きそうになりながら先に進む。梵天岳まではそこまでキツくないはずだ。
梵天岳へ向かう鞍部の手前で鞍部に黒いものが見えた。
子熊だ!
ということは母熊もいるということである。背筋が凍りつき血の気が引く。
程なくしてやはり母熊が出てきた!デカい!
幸い見晴らしが良く、距離があるのでとりあえず熊鈴や笛を鳴らす。
反応を見ているとkmさんが持っていた笛が一番熊には聞こえているようだ。
私も以前使っていたザックには笛が付いていたが、この年から使い始めたモンベルの100Lのエクスペディションパックには笛が付いていなかった。。この山行の後すぐに笛を買ったのは言うまでもない。
モンベル(mont‐bell) キーカラビナ ホイッスルナスカン 5 バーミリオン VER
こちらに気づいて熊は鞍部から去っていったが、いつまた戻ってくるか分からない恐怖を感じながら、珍道中のように騒がしく鈴や笛で音を立てて無駄に体力を消耗しながら鞍部を通過し、梵天岳へ登り返し始めた。
梵天岳への登りも少しずつ急になっていく。もう足がほとんど残っていない。
やっとの思いで梵天岳に到達した頃には放心状態であった。もう先に進みたくない。
しかしkmさんは今日のうちにさらに先に進んでおきたいようだ。正気の沙汰とは思えない。。
反論する力もなく、亡霊のように先に進む。梵天岳の東の1,723mのピークへ渡る尾根に降りようとしたところ、藪が露出していた。その先の尾根を見下ろしたところ、雪の付きが悪く、付いている雪も割れ目が多くて今にも崩れそうに見える。
大丈夫なのかもしれないが、万が一にも渡っている時に崩れたらひとたまりもないだろう。
さすがのkmさんも万が一の場合を考えて止めておきましょうということになった。
残念だが致し方ない。梵天岳の直下でテン泊して帰ることにした。余談であるが、後日他の方のブログを見ていたら、我々の2~3日後にやはりここを通過して丸山岳に登頂されている方がいたので、結果的には何ら問題なく渡れたのかもしれないが、私の体力的には丸山岳まで行って戻ってこれたかは甚だ疑問である。やはりマイナー12名山は素人下山家勤め人にはハードルが高すぎたようだ。
丸山岳には行けなかったが、梵天岳からは夢にまで見た丸山岳がど~んと丸見えになり、これまでにない多幸感に包まれた。
(3日目に続く)