マイナー12名山

丸山岳(2日目:残雪期1泊2日)

丸山岳山頂

1日目から続く)

夜が更けてテントで床についた直後に何者かの足音が聞こえた。暗くなってからも歩いていた人がいたようだ。

夜は西風が強くテントが揺られた。梵天岳の東面にテントを張ったのは正解であった。寝袋の代わりにしている私のダウンは腕の部分が薄々になってしまっているため、腕だけが寒い。
こんな風ではまともに歩けないかもしれないと思いながらうとうとしていたが、夜明けが近づくにつれ風が治まってきた。

素人下山家勤め人にもいよいよ丸山岳山頂アタックの日がやってきたのであった。(2019年5月4日)

丸山岳へのビクトリーロード

明るくなり始めるのと同時にテントから出た。風もなく丸山岳や越後の山々がよく見える。

梵天岳で御来光を拝む梵天岳で御来光を拝む
梵天岳で御来光

御来光を拝んでから、テントと不要な荷物をそのまま梵天岳にデポして歩き始めた。明け方は少し冷えたせいか雪が若干硬くなっているがアイゼンを付ければ全く問題ない。
朝陽に照らされている丸山岳に向かって一心不乱に歩き続ける。初めてフルマラソンを完走した時にゴールの2kmくらい手前で感じた時と同じような確信と充実感がこみ上げてくる。強い多幸感の予感に包まれる。今歩いているのは丸山岳へのまさにビクトリーロードだ。

朝陽に照らされる丸山岳朝陽に照らされる丸山岳
朝陽を浴びながら丸山岳へのビクトリーロードを歩く朝陽を浴びながら丸山岳へのビクトリーロードを歩く

最後の急坂を登るところで降りてくるソロの人がいた。斜面に誰かがテン泊をした跡もあった。
容赦なく登っていくkmさんに遅れまいと必死に登るが、どんどん離される。ぬらー!最後の根性を振り絞る。

丸山岳への最後の登り丸山岳への最後の登り
梵天岳方面梵天岳方面
ついに見えた丸山岳の山頂ついに見えた丸山岳の山頂
丸山岳の山頂丸山岳の山頂
丸山岳の山頂直下丸山岳の山頂直下

 

丸山岳の山頂で思ったこと

2019年5月4日6:20ついに丸山岳の山頂に立った。私にとっては、会津百名山の60山目である。最初の挑戦から6年越しでの登頂であった。マイナー12名山だけあって、人一人いない。また、サバイバル登山家の服部文祥さんが言っていたとおり、人工物が一切目に入ってこない。残雪で真っ白の山頂で360°の眺望を堪能する。

越後駒ヶ岳方面越後駒ヶ岳方面
平ヶ岳方面平ヶ岳方面
会津駒ヶ岳方面会津駒ヶ岳方面
会津朝日岳方面会津朝日岳方面
浅草岳方面浅草岳方面
至仏山至仏山
燧ヶ岳燧ヶ岳
平ヶ岳平ヶ岳
越後駒ヶ岳越後駒ヶ岳
中ノ岳中ノ岳
浅草岳浅草岳
鬼が面山鬼が面山
毛猛山・守門岳毛猛山・守門岳
会津駒ヶ岳・中門岳会津駒ヶ岳・中門岳
大戸沢岳大戸沢岳
三岩岳三岩岳
丸山岳山頂丸山岳山頂
磐梯山磐梯山
博士山・安達太良山博士山・安達太良山
吾妻山・磐梯山・安達太良山方面吾妻山・磐梯山・安達太良山方面
飯豊連峰飯豊連峰
未丈ヶ岳未丈ヶ岳

感慨深いがそれよりも目標を達成してしまい、もう目指すものがなくなってしまったという喪失感が強い。さらに言うと、ここまでかなりの距離を歩いてきたのでさっさと帰って早く温泉に入って下界のぬるい環境で脱力したいという思いがどんどん湧いてくる。

昔、竹内洋岳さんが8,000m14座目のダウラギリの山頂に立った時にどんな気持ちになりましたか?と聞かれて、寒くて早く下山したいと思ったという風に答えていたのを思い出す。

第1回 山頂は到達点ではなく単なる通過点 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

kmさんも同じだったようでさっさと帰りましょうということになり、20分もしないうちに帰路についた。

丸山岳の東峰丸山岳の東峰
梵天岳の東の1723m峰から見た帰路梵天岳の東の1723m峰から見た帰路

丸山岳からの下山は順調と思ったがそう簡単には問屋が卸さなかった

昨年と違い、今年は雪も多く歩きやすい上に昨年ほど暑くもないので何としても今日中に降りてしまいましょうということになった。梵天岳でテントを回収して軽く朝飯を食い、すぐに歩き出した。

奥只見丸山スキー場奥只見丸山スキー場

高幽山の手前は少し雪が波打っているが昨年よりはかなりマシだ。高幽山の先の鞍部からの坪入山への登り返しは少々キツいが去年の経験もあるのでkmさんに離されながらも何とか根性でついていく。昨日来る時に坪入山あたりに2Lのペットボトルの水をデポして身軽にしておくべきであった。

坪入山の西の1754m峰坪入山の西の1754m峰

坪入山に着いた時点ではまだ体力と足が残っていた。昨年と違い、今年は余力を残して下山できそうだと安堵する。しかし、そうは問屋が卸さなかった。

窓明山と坪入山の間の鞍部から見た坪入山窓明山と坪入山の間の鞍部から見た坪入山

窓明山への登り返す後半の藪藪ゾーンが非常に歩きづらく大苦戦してしまう。昨日坪入山へ向かって降りていく時とは違い、時間と体力をどんどん奪われる。素人下山家勤め人の力では藪は力づくで何とかなるものではない。
窓明山に着いた時にはヘロヘロになっていた。余力を残して下山するなんて甘かったようだ。
足も体力ももうほとんど残っていなかったが、ここから先は何度も通った慣れた道であるので根性で降りる。

窓明山窓明山

家向山にテントを張っている人がいたが、我々にもう1泊という選択肢はない。降りるのみだ。これまでの経験から多少無理をしても泊数を減らした方が遥かに楽だ。テントで寝るより下山して温泉に入ってさっぱりして車中泊した方が疲れも取れて快適である。
今日中に下山して温泉に入るのだ!という一心で下ざる。
無事国道352号線に降り立った後は昨年と同様に燧の湯に入って一道で飯を食って車中泊して朝風呂に入って朝ラーを食って帰ったのは言うまでもない。

山を登りまくっている方のブログではたしかに1泊2日で丸山岳を往復している方もおられたが、素人下山家勤め人の分際でまさか丸山岳に1泊2日で行ってこれるとは思わなかった。やはり山は種々条件に左右されるものであることを再認識した。

丸山岳(2日目)のコースタイム

4:45 梵天岳発
6:20 丸山岳登頂
6:40 丸山岳発
8:00 梵天岳着
8:45 梵天岳発
10:15 高幽山通過
13:30 坪入山通過
16:10 窓明山通過
18:45 巽沢山通過
19:15 下山